Meaning
七十二候は、五日ごとの季節の名前。
七十二候(しちじゅうにこう)は、二十四節気をさらに三つに分けた暦です。 ひとつの節気は約十五日。その中を「初候」「次候」「末候」に分けるため、 七十二候はおよそ五日ごとに移り変わります。
名前には、動植物や天候の変化が多く登場します。 「東風解凍」は春の風が氷をとかすころ、「桜始開」は桜が咲きはじめるころ、 「蟋蟀在戸」は虫の声が戸口に近づくころ。昔の人は、季節を数字だけでなく、 目に見える自然のしるしとして受け取っていました。
24 and 72
二十四節気との違い。
二十四節気は、太陽の動きをもとに一年を24に分ける暦です。 立春、春分、夏至、秋分、冬至など、今でも天気予報や年中行事でよく使われます。
七十二候は、その二十四節気をさらに細かくしたものです。 ひとつの節気に三つの候があるため、24 × 3 = 72。 大きな季節の骨格が二十四節気なら、七十二候はその中で起こる小さな変化の記録です。
春分・夏至・秋分・冬至など、季節の大きな節目。
花、鳥、虫、雨、雪など、自然の細かな変化。
List
七十二候一覧
ここでは、暦アプリ「暦の輪」に収録している七十二候の解説をもとに、 春夏秋冬の候を一覧で紹介します。候名、読み方、意味の手がかり、関連する句や名画もあわせて眺められます。
Season of Spring
春の七十二候
2月4日ごろ / 春の節気
立春 りっしゅん
二十四節気のいちばん最初、一年の始まりの節気です。「立(りつ)」には、「新しい季節が立つ(始まる)」という意味があります。暦の上では、この日から春。まだ寒さがきびしく、一年でいちばん冷えこむ時期ですが、太陽の光は少しずつ力を取りもどし、春に向かって動きはじめます。「立春」を基準に、いろいろな暦のことばが決まります。立春の前日は...
東風解凍
はるかぜこおりをとく
一年の節気は、この立春(りっしゅん)から始まります。暦の上では、この日からが春です。「東風(はるかぜ)」とは、春に東の方角からふいてくる、あたたかな風のこと。むかしの中国では、東は春をつかさどる方角と考えられ、春の風は東から来ると信じられてきました。その風が、冬のあいだ川や池にかたく張っていた氷を、少しずつとかしていく――それが、この候の名前の意味です。とはいえ立春は、寒さがいちばんきびしい時期の終わりごろ。まだ雪の...
梅一輪 一輪ほどの あたたかさ
服部嵐雪
名画亀戸梅屋舗(名所江戸百景) / 歌川広重
黄鶯睍睆
うぐいすなく
ウグイス(黄鶯)が、山里で「ホーホケキョ」と美しい声で鳴きはじめるころです。春の訪れをまっさきに知らせてくれることから、ウグイスは「春告鳥(はるつげどり)」ともよばれ、古くから日本人に愛されてきました。じつは、あの「ホーホケキョ」とよく通る声で鳴くのはオスだけ。縄張りを守ったり、メスに自分をアピールしたりするための、いわば恋の歌なのです。春のはじめはまだ鳴き方がぎこちなく、「ケキョケキョ」とたどたどしいのも、この時期...
鶯の 鳴くやちひさき 口あいて
与謝蕪村
名画梅に鶯 / 歌川広重
魚上氷
うおこおりをいずる
あたたかくなって水がぬるみ、湖や川に張っていた氷が割れて、その割れ目から魚がはねあがるころです。冬のあいだ、水の底でじっと身をひそめていた魚たちも、春の気配を感じて動きはじめます。水の温度がほんの少し上がるだけで、魚は活発になり、えさを求めて泳ぎだすのです。氷の下にも、もう春は来ているのですね。むかしの人は、寒さで動きを止めていた生きものが、暖かさとともによみがえる様子を、季節のうつろいの目印として、こまやかに観察し...
名画魚づくし 鯔(ぼら)に椿 / 歌川広重
2月19日ごろ / 春の節気
雨水 うすい
「雨水(うすい)」は、空から降るものが、雪から雨へと変わっていくころ、という意味です。きびしい寒さがやわらぎ、降り積もった雪や氷もとけはじめて、大地がうるおいを取りもどします。「雪解け(ゆきどけ)」の水が田畑をうるおすことから、昔から、この雨水は「農耕(のうこう=田畑をたがやす仕事)の準備を始める目安の日」とされてきました。空...
土脉潤起
つちのしょううるおいおこる
「雨水(うすい)」は、空から降るものが、雪から雨へと変わるころ。冷たい雪があたたかい春の雨に変わり、その雨にうるおった土が、目を覚ますように生き返る――それが、この候の名前の意味です。「脉」は脈(みゃく)と同じ字で、土の中をめぐる水の流れを、人の体の血のめぐりにたとえています。冬のあいだ、かちかちに凍えていた大地が、雨と地中の水のはたらきで、ふっくらとやわらかくゆるんでいきます。土の中では、虫や植物の根が、春の準備を...
春雨や ものがたりゆく 蓑と傘
与謝蕪村
名画東海道五十三次 土山 春之雨 / 歌川広重
霞始靆
かすみはじめてたなびく
春霞(はるがすみ)が、山のすそに、ぼんやりとたなびきはじめるころです。空気がしっとりとうるおい、遠くの景色が、やわらかくかすんで見えます。冬のキリッとすんだ空気とはちがう、春ならではのやさしいけしきです。じつは「霞」という言葉は、気象の用語ではなく、古くからの風流な呼び名。同じものでも、昼に見えるものを「霞」、夜に月の光でぼんやり見えるものを「朧(おぼろ)」とよび分けてきました。「朧月夜(おぼろづきよ)」という美しい...
春なれや 名もなき山の 朝霞
松尾芭蕉
名画名所江戸百景 霞がせき / 歌川広重
草木萌動
そうもくめばえいずる
草や木が、いっせいに新しい芽をふきはじめるころです。「萌(も)える」とは、芽が出ること。あざやかな黄緑色をさす「もえぎ色(萌黄色)」という色の名前も、芽ぶいたばかりの若葉の色からきています。茶色一色だった冬の地面のあちこちから、小さな緑の芽が、つんと顔を出します。木々の枝先にも、かたいつぼみがふくらみはじめます。よく見れば、足もとにもう春が来ていて、いつもの散歩道が、宝さがしのように楽しくなる季節です。生きものたちが...
名画名所江戸百景 真崎辺より水神の森・関屋の里 / 歌川広重
3月6日ごろ / 春の節気
啓蟄 けいちつ
「啓蟄(けいちつ)」は、土の中で冬ごもりしていた虫たちが、目を覚まして、もぞもぞと外へ出てくるころ、という意味です。「蟄(ちつ)」は、虫が土にこもること。「啓(けい)」は、戸を開くこと。あたたかい春の日ざしにさそわれて、カエルやヘビ、トカゲ、ダンゴムシといった生きものたちが、いっせいに動きだします。地面の下から、にぎやかな春の...
蟄虫啓戸
すごもりむしとをひらく
「啓蟄(けいちつ)」は、土の中で冬ごもりしていた虫たちが、戸を開けるように、もぞもぞと外へ出てくるころです。「蟄(ちつ)」は虫が土にこもること、「啓(けい)」は開くこと。あたたかい春の日ざしにさそわれて、冬眠していた生きものたちが、いよいよ目を覚まします。カエルやヘビ、トカゲ、ダンゴムシ……土の中でじっと寒さをやりすごしていた小さな命が、つぎつぎと顔を出します。むかしの農家では、この虫たちの目覚めを、田畑の仕事を始め...
名画東都名所 真崎暮春之景 / 歌川広重
桃始笑
ももはじめてさく
桃の花が、つぼみをほころばせて、さきはじめるころです。むかしの人は、花がさくことを「笑う」と表現しました。「山笑う」という春の言葉もあるように、花がいっせいにひらく様子は、たしかに、にっこりほほえんでいるように見えます。やわらかなピンク色の桃の花は、見ているだけで心がなごみます。桃は、ちょうど三月三日の桃の節句(ひなまつり)のころに咲くことから、女の子の健やかな成長を願う花として親しまれてきました。また桃には、悪いも...
名画月下 桃に燕 / 歌川広重
菜虫化蝶
なむしちょうとなる
菜の葉を食べて育った青虫(菜虫)が、さなぎの時を経て、やがてモンシロチョウとなって飛び立つころです。地をはうことしかできなかった小さな虫が、あるとき羽をひろげ、ひらひらと空へ舞いあがる――。同じひとつの命が、まったくちがう姿に生まれ変わる、自然のふしぎでドラマチックなできごとです。むかしの人は、この大きな変わりようにおどろき、ひらひらと舞う蝶を、どこかこの世のものでないような、神秘的な生きものと感じていました。散った...
落花枝に 帰ると見れば 胡蝶かな
荒木田守武
名画牡丹に蝶 / 葛飾北斎
3月21日ごろ / 春の節気
春分 しゅんぶん
「春分(しゅんぶん)」は、昼と夜の長さが、ほぼ同じになる日です。太陽が真東からのぼって、真西にしずみます。この日を境に、これからは昼がだんだん長く、夜が短くなっていきます。「春分の日」は国民の祝日で、「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」とされています。また、春分の日をまん中にした前後7日間は「春のお彼岸(ひがん)」。ご先祖さま...
雀始巣
すずめはじめてすくう
「春分(しゅんぶん)」は、昼と夜の長さが、ほぼ同じになる日です。この日を境に、少しずつ昼が長くなり、夜が短くなっていきます。太陽が真東からのぼって真西にしずむため、お彼岸(ひがん)の中日(ちゅうにち)として、ご先祖さまを供養する大切な日でもあります。そんなころ、身近なスズメが、わらや枯れ草、羽毛などを集めて、せっせと巣作りをはじめます。屋根のすき間や、かべのあなを上手に利用して、子育ての準備をするのです。いつもは群れ...
雀の子 そこのけそこのけ お馬が通る
小林一茶
名画菊に雀 / 葛飾北斎
桜始開
さくらはじめてひらく
いよいよ桜の花が、さきはじめるころです。日本人にとって、一年でもっとも心はずむ季節ではないでしょうか。気象台では、決められた木(標本木=ひょうほんぼく)のつぼみを見守り、五輪・六輪ひらいた日を「開花宣言」として発表します。南からあたたかさが届くにつれて、桜の咲くたよりが日本列島を少しずつかけのぼっていく様子は、「桜前線(さくらぜんせん)」とよばれます。一輪、また一輪とほころんだ花は、やがていっせいに満開をむかえ、わず...
さまざまの こと思ひ出す 桜かな
松尾芭蕉
名画桜花(不二三十六景より) / 歌川広重
雷乃発声
かみなりすなわちこえをはっす
遠くの空で、春の雷(かみなり)が、ゴロゴロと鳴りはじめるころです。この時期の雷は「春雷(しゅんらい)」とよばれ、冬のあいだ静かだった空が、ふたたび動きだした合図とされてきました。春の雷は、夏の激しい雷とちがって、ひとしきり鳴って、めぐみの雨を残して通りすぎていくことが多いものです。とくに立春のあとに初めて鳴る雷は「初雷(はつかみなり)」とよばれ、冬ごもりの虫たちを目覚めさせる、とも言いつたえられてきました。雷が、土の...
名画冨嶽三十六景 山下白雨 / 葛飾北斎
4月5日ごろ / 春の節気
清明 せいめい
「清明(せいめい)」は、「清浄明潔(せいじょうめいけつ)」という言葉を、ちぢめたものです。すべてのものが清らかで、生き生きと、明るく輝く季節、という意味。やわらかな春の日ざしの中で、草木が芽吹き、花が咲きほこり、鳥がさえずる――。一年でもっとも、いのちがかがやく、すがすがしいころです。南の国からはツバメが帰ってきて、空には色と...
玄鳥至
つばめきたる
「清明(せいめい)」は、「清浄明潔(せいじょうめいけつ)」という言葉をちぢめたもので、すべてのものが清らかで、生き生きと輝く季節という意味です。万物が春の光をあびて、いきいきと色づくころ。そんなとき、南のあたたかい国で冬を越したツバメが、海をこえて、はるばる日本へ帰ってきます。「玄鳥(げんちょう)」はツバメのこと。ツバメは、わざわざ人の家の軒先(のきさき)を選んで巣を作ります。人がいると、ヘビやカラスといった天敵が近...
夕燕 われにはあすの あてもなし
小林一茶
名画枝上の五羽の燕 / 歌川広重
鴻雁北
こうがんかえる
秋に日本へやってきて冬を過ごしたガン(雁)が、北のふるさと、シベリアへと帰っていくころです。春に南から来るツバメと、北へ帰っていくガン。ちょうど鳥たちが入れ替わるこの時期は、季節が大きく動く節目でもあります。ガンは、何百羽もの群れが「さお」のように一直線にならんだり、「かぎ」のようにくの字に折れたりして、長い列をつくって空を渡っていきます。この飛び方は「雁行(がんこう)」とよばれ、先頭の鳥が風を切り、後ろの鳥の負担を...
帰る雁 田ごとの月の くもる夜に
与謝蕪村
名画月に雁 / 歌川広重
虹始見
にじはじめてあらわる
空気がしっとりとうるおって、雨あがりに、にじがきれいに見えはじめるころです。虹は、空気中にうかぶ小さな水のつぶが、太陽の光を受けて、七つの色に分けて見せてくれるもの。だから、雨あがりに太陽を背にして空を見ると、大きな虹のアーチに出会えます。冬のかわいた空気では、水のつぶが少なくて虹は見えにくいのですが、春になって雨がふえ、空気がうるおうと、ふたたび虹がよみがえります。日本では昔から虹は七色とされてきましたが、国や時代...
名画名所江戸百景 日暮里寺院の林泉 / 歌川広重
4月20日ごろ / 春の節気
穀雨 こくう
「穀雨(こくう)」は、「百穀(ひゃっこく)をうるおす春の雨」という意味です。穀物(こくもつ=米や麦などの作物)の成長をたすける、やわらかな春の雨が降るころ。種をまいた田畑にとって、まさにめぐみの雨で、農家にとって大切な、田植えや種まきの準備が本格的に始まります。「穀雨」は、春の最後の節気。このころに降る雨は、しっとりと地面をう...
葭始生
あしはじめてしょうず
「穀雨(こくう)」は、穀物(こくもつ=米や麦などの作物)をうるおし、育ててくれる、やわらかな春の雨が降るころです。この雨は、種をまいた田畑にとって、まさにめぐみの雨。農家にとって大切な、田植えの準備が本格的に始まるころでもあります。そんな水辺では、葦(あし)の新芽が、すっとまっすぐに伸びはじめます。葦は、川岸や池のほとりにむらがって生える、背の高い草。すだれやよしず、屋根など、むかしから人々のくらしに役立てられてきま...
名画名所江戸百景 八ツ見のはし / 歌川広重
霜止出苗
しもやみてなえいずる
冷たい霜(しも)が、もう降りなくなり、苗代(なわしろ)で稲の苗(なえ)が、すくすくと育つころです。「苗代」とは、田んぼに植える前の、小さな苗を育てるための専用の苗床(なえどこ)のこと。霜は、やわらかい若い芽をいためてしまうので、「もう霜は降りない」とわかることは、農家にとって、とても大事な合図でした。むかしの人は、八十八夜(はちじゅうはちや)のころを「忘れ霜(わすれじも)」の終わりとし、これを目安に苗を育て、田植えに...
名画東海道五十三次 藤川 / 歌川広重
牡丹華
ぼたんはなさく
「花の王様(百花の王)」とよばれる牡丹(ぼたん)が、大きくはなやかな花を、ほこらしげにひらくころです。「立てば芍薬(しゃくやく)、座れば牡丹、歩く姿は百合(ゆり)の花」という言葉があるほど、牡丹は、美しい女性のたとえにも使われる、あでやかな花。手のひらより大きく、いくえにも重なった花びらは、見る人を圧倒します。牡丹は、もともと中国でとても大切にされ、薬としても用いられてきました。日本へは、奈良時代ごろに伝わったといわ...
牡丹散りて 打ちかさなりぬ 二三片
与謝蕪村
名画牡丹に蝶 / 葛飾北斎
Season of Summer
夏の七十二候
5月6日ごろ / 夏の節気
立夏 りっか
「立夏(りっか)」は、暦の上で夏が始まる日です。「夏が立つ(始まる)」という意味。野山の新緑がまぶしくかがやき、空が高く青くすみわたる、一年でもっともさわやかで、すごしやすい季節です。気温も少しずつ上がり、初夏の心地よい風がふきわたります。田んぼではカエルが鳴きはじめ、野には若葉が燃えるように茂ります。ちょうどゴールデンウィー...
蛙始鳴
かわずはじめてなく
「立夏(りっか)」は、暦の上で夏が始まる日です。野山の新緑がまぶしく、空が高く青くすみわたる、一年でいちばんさわやかな季節。そんなころ、田んぼや水辺で、カエル(蛙)が「ゲロゲロ」と鳴きはじめます。鳴くのはおもにオスで、メスを呼ぶための、いわば求愛(きゅうあい)の歌。夕方、いっせいに響きわたるカエルの合唱は、夏の到来を知らせる、にぎやかな音楽です。「蛙(かわず)」は、古くから和歌や俳句に、数えきれないほど詠まれてきまし...
古池や 蛙飛びこむ 水の音
松尾芭蕉
名画鳥獣人物戯画(甲巻) / 伝 鳥羽僧正
蚯蚓出
みみずいずる
ミミズ(蚯蚓)が、土の中から、もぞもぞとはい出してくるころです。じみで目立たない生きものですが、じつは畑にとって、なくてはならない大切な働き者。ミミズは土を食べ、その中の落ち葉や枯れたものを分解して、栄養たっぷりのフンを出します。そのフンが、作物のよく育つ、ふかふかの肥えた土をつくるのです。さらに、土の中を動きまわることで、土に空気や水のとおり道ができ、植物の根が育ちやすくなります。「ミミズのいる土は、よい土」といわ...
名画名所江戸百景 王子瀧の川 / 歌川広重
竹笋生
たけのこしょうず
タケノコ(竹笋)が、地面からひょっこりと顔を出すころです。「笋(じゅん)」は、タケノコをあらわす字。タケノコは、一日で数十センチも伸びることがあるほど、成長がおどろくほど速い植物です。「雨後(うご)の筍」――雨のあとにタケノコがつぎつぎ生えるように、ものごとがいきおいよく増えることのたとえにも使われます。掘りたてのタケノコはやわらかく、えぐみも少なく、まさに今だけのごちそう。煮物やたけのこご飯にして、春から夏への味覚...
名画筍掘り / 鈴木春信
5月21日ごろ / 夏の節気
小満 しょうまん
「小満(しょうまん)」は、あらゆる生きものが成長して、天地(てんち)に、いのちが少しずつ満ちてくるころ、という意味です。「小(しょう)」さく「満(み)」ちる、と書きます。秋にまいた麦が穂をつけて、ほっとひと安心する――「これで少し満足(まんぞく)」というところから、この名がついた、ともいわれます。野山の草木はぐんぐん茂り、緑が...
蚕起食桑
かいこおきてくわをはむ
「小満(しょうまん)」は、草木がぐんぐん育ち、いのちが満ちあふれてくるころ。そんな時期、蚕(かいこ)が、桑(くわ)の葉をさかんに食べて、すくすくと育ちます。蚕は、口から糸を吐いて、自分のまわりにまゆ(繭)をつくります。このまゆから取れるのが、美しくつややかな絹(きぬ)の糸。一本のまゆから、なんと千メートル以上もの糸がとれることもあります。絹は、着物や帯になる高級な布で、養蚕(ようさん=蚕を育てること)は、長いあいだ日...
名画鴻之台 利根川 / 歌川広重
紅花栄
べにばなさかう
口紅や、着物の染め物のもとになる紅花(べにばな)が、あざやかにさきほこるころです。紅花は、咲きはじめは黄色く、日がたつにつれて、しだいに赤みをおびてきます。この花から、ほんのわずかしか取れない赤い色素を、ていねいに取り出して、紅(べに)をつくりました。「紅一匁(べにいちもんめ)、金一匁」――同じ重さの金と同じ値打ちがある、といわれたほど、紅は高価で貴重なものでした。とくに山形県の最上(もがみ)地方は、紅花の一大産地と...
名画名所江戸百景 堀切の花菖蒲 / 歌川広重
麦秋至
むぎのときいたる
麦が黄金色に実り、収穫のときをむかえるころです。季節は初夏なのに、「麦秋(ばくしゅう)」――麦の秋、とよぶのがおもしろいところ。これは、稲にとっての秋(実りの季節)が、麦にとってはこの初夏にあたるからです。麦は、秋に種をまき、寒い冬をじっとこえて、初夏に実るという、稲とは逆のリズムで育つ作物。だから、田んぼで稲を育てる前のあいた時期に麦をつくる「二毛作(にもうさく)」が、昔からさかんに行われてきました。一面に広がる麦...
麦の穂を たよりにつかむ 別れかな
松尾芭蕉
名画名所江戸百景 王子瀧の川 / 歌川広重
6月6日ごろ / 夏の節気
芒種 ぼうしゅ
「芒種(ぼうしゅ)」は、「芒(のぎ)」のある穀物の種をまくころ、という意味です。「芒(のぎ)」とは、稲や麦の穂先にある、とげのような細い毛のこと。むかしは、このころが田植えや種まきのいそがしい時期でした。じめじめとした季節で、ちょうど本州では、梅雨(つゆ)に入るのも、この芒種のころ。「梅雨」と書くのは、梅の実が黄色く熟す季節の...
螳螂生
かまきりしょうず
「芒種(ぼうしゅ)」は、芒(のぎ=稲や麦の穂先にある、とげのような毛)をもつ作物の、種をまくころ、という意味です。田植えでいそがしい時期にあたります。そんなころ、秋に産みつけられた卵のかたまりから、カマキリ(螳螂)の赤ちゃんが、いっせいに生まれてきます。小さくても、前あしをかまえる姿は、もう一人前のハンター。アブラムシなどの害虫を食べてくれるので、畑や庭では、たのもしい味方です。カマキリの卵は、あわでできたスポンジの...
名画草に虫(蝸牛と蛙) / 葛飾北斎
腐草為螢
くされたるくさほたるとなる
蒸れた草むらの中から、ホタル(螢)が、ふわりと光をともして飛び立つころです。むかしの人は、その幻想的な光を見て、「むれてくさった草が、ホタルに生まれ変わったのだ」と考えました。それほど、ホタルの光は、どこか、この世のものでないように感じられたのでしょう。じっさいには、ホタルの幼虫は、きれいな水の中でカワニナという貝を食べて育ち、さなぎを経て、光る成虫になります。だから、ホタルがたくさん飛ぶのは、その川の水がきれいな証...
大蛍 ゆらりゆらりと 通りけり
小林一茶
名画名所江戸百景 両国花火 / 歌川広重
梅子黄
うめのみきばむ
青かった梅の実が、しだいに黄色く熟していくころです。ちょうどこの時期に降りつづく雨を「梅雨(つゆ)」とよぶのは、梅の実が熟す季節の雨だから、という説があります。「梅雨」と書いて「つゆ」と読むのも、ここからきています。じめじめとして気分のしずみがちな季節ですが、田畑にとっては、たっぷりの水をたくわえる、なくてはならないめぐみの雨。さて、熟す前の青い梅は、梅干しや梅酒、梅シロップへと姿を変えます。梅を塩や氷砂糖に漬けこむ...
五月雨や 大河を前に 家二軒
与謝蕪村
名画東海道五十三次 庄野 白雨 / 歌川広重
6月21日ごろ / 夏の節気
夏至 げし
「夏至(げし)」は、一年でいちばん昼が長く、夜が短い日です。太陽がもっとも高くのぼり、北半球では、日の出から日の入りまでの時間が、最大になります。冬至とくらべると、昼の長さは、地域によって四〜五時間もちがいます。「至(し)」は、「いたる・きわまる」という意味。太陽の力が、いちばん強くなる日です。とはいえ、日本ではちょうど梅雨の...
乃東枯
なつかれくさかるる
「夏至(げし)」は、一年でいちばん昼が長く、夜が短い日です。太陽がもっとも高くのぼり、北半球では、日の出から日の入りまでがいちばん長くなります。冬至とくらべると、昼の長さは、地域によって五時間ちかくもちがいます。さて、この候の名前にある「乃東(だいとう)」とは、「靫草(うつぼぐさ)」という草のこと。多くの草木が青々としげる夏に、この靫草だけは、花の穂が枯れて、茶色くなっていきます。冬至のころに芽を出し、夏至に枯れる―...
名画鴻之台 利根川 / 歌川広重
菖蒲華
あやめはなさく
あやめ(菖蒲)の花が、むらさき色にひらくころです。すらりと伸びた葉のあいだから、上品な花が顔を出します。「いずれ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」という言葉は、あやめ・かきつばた・花菖蒲(はなしょうぶ)がよく似ていて見分けにくいことから、どちらもすぐれていて選ぶのに迷う、という意味で使われます。見分けるなら、花びらのつけ根の模様が手がかり。あやめは網目(あみめ)もよう、かきつばたは白い筋、花菖蒲は黄色い筋が入ります...
杜若 語るも旅の ひとつかな
松尾芭蕉
名画燕子花図屛風(左隻・国宝) / 尾形光琳
半夏生
はんげしょうず
「半夏(はんげ)」――カラスビシャクとも呼ばれる薬草が、生えるころです。「半夏生」は、雑節(ざっせつ)のひとつにも数えられ、農家にとって、とても大事な節目でした。むかしから、「半夏生までに田植えを終わらせる」のが、よい実りのための目安とされてきたのです。これより遅れると、稲の育ちが悪くなるといわれ、農家はこの日までにと、いそいで田植えを仕上げました。そして、田植えを終えたあとは、しばらく田畑の仕事を休んで、体を休める...
名画名所江戸百景 堀江ねこざね / 歌川広重
7月7日ごろ / 夏の節気
小暑 しょうしょ
「小暑(しょうしょ)」は、暑さが、これから本格的になっていくころ、という意味です。「小(しょう)」さい「暑(しょ)」さ、と書きます。梅雨が明けるのも、ちょうどこのころ。明けると、もくもくとした入道雲(にゅうどうぐも)が空にわきあがり、セミの声が聞こえはじめて、いよいよ夏本番をむかえます。この小暑から、つぎの大暑をへて立秋までの...
温風至
あつかぜいたる
「小暑(しょうしょ)」は、これから暑さが本格的になっていくころ、という意味です。梅雨が明けるころにふく、あたたかく湿った南風が、夏の到来を告げます。この風を、むかしの人は「温風」とよびました。空には、夏らしい大きな入道雲(にゅうどうぐも)がもくもくとわきあがり、セミの声も少しずつ聞こえはじめます。この日から立秋までの約一か月が、一年でいちばん暑さのきびしい「暑中(しょちゅう)」。日ごろお世話になっている人へ、健康を気...
名画冨嶽三十六景 凱風快晴(赤富士) / 葛飾北斎
蓮始開
はすはじめてひらく
池の蓮(はす)が、清らかな花をひらきはじめるころです。蓮の花は、夜明けとともにそっとひらき、昼にはとじてしまいます。だから、その美しい姿を見るなら、すずしい早朝がいちばん。三日ほどひらいたりとじたりをくり返し、やがて静かに散っていきます。蓮は、どろの中に根を張りながら、けがれのない美しい花をさかせることから、仏教では「清らかさ」の象徴として、とても大切にされてきました。お寺の池によく植えられ、仏さまが蓮の花の台(うて...
名画不忍池(しのばずのいけ) / 歌川広重
鷹乃学習
たかすなわちわざをならう
春に生まれたタカ(鷹)の子が、巣立ちにそなえて、飛び方やえものの取り方を、いっしょうけんめい学ぶころです。親のすることをまねながら、何度も何度も練習をかさね、少しずつ上達していきます。やがて、自分の力で大空へ羽ばたく、ひとり立ちのとき。タカは、空の王者ともいえる、するどいハンターです。その立派な姿から、強さや気高さの象徴とされ、武士にとくに好まれました。「一富士二鷹三なすび」――初夢に見ると縁起がよいものの二番目に鷹...
名画松に鷹 / 狩野之信
7月23日ごろ / 夏の節気
大暑 たいしょ
「大暑(たいしょ)」は、その名のとおり、一年でもっとも暑さがきびしくなるころです。じりじりと照りつける強い日ざしと、むわっとした蒸し暑さに、体力をうばわれがちな時期。打ち水(うちみず)や、すだれ、風鈴(ふうりん)の音など、昔の人は、自然の力を上手に借りて、この暑さをしのいできました。夏の土用(どよう)も、この大暑のころ。「土用...
桐始結花
きりはじめてはなをむすぶ
「大暑(たいしょ)」は、一年でもっとも暑さがきびしくなるころ。そんな盛夏に、桐(きり)の木が、来年の春にさく花のもと(つぼみ)を、早くも結びはじめます。桐は、初夏にうす紫の上品な花をさかせたあと、こうして次の年の準備に入るのです。桐は、成長がとても速く、軽くてしなやかで、湿気にも強い、すぐれた木材。むかしは、女の子が生まれると桐の木を植え、お嫁にいくとき、その木でたんすをつくって持たせた、という言いつたえもあります...
名画名所江戸百景 赤坂桐畑 / 歌川広重
土潤溽暑
つちうるおうてむしあつし
土がたっぷりと湿り、むわっとした蒸し暑さが続くころです。「溽(じょく)」は、むし暑いこと。地面からも、もわもわと熱気がたちのぼり、じっとしていても汗ばむような日が続きます。一年でいちばん暑さのこたえる時期です。エアコンのなかったむかしの人は、さまざまな工夫で、この暑さをしのいできました。道や庭に水をまく「打ち水(うちみず)」は、水が蒸発するときに、まわりの熱をうばってくれるので、すずしさを生みます。ほかにも、すだれや...
名画東都両国橋 夕涼みと花火 / 歌川広重
大雨時行
たいうときどきにふる
夏の夕立(ゆうだち)や大雨が、時おり、はげしく降るころです。むし暑い空気が地上にたまると、上空との温度の差で、もくもくと大きな積乱雲(せきらんうん=入道雲)が育ちます。そして午後から夕方にかけて、急に空が暗くなり、たたきつけるような雨が、ざあっと降りそそぐのです。これが夕立。短い時間でやみ、雨上がりには、むし暑さがやわらいで、すずしい風がふきぬけます。「夕立は馬の背を分ける」――同じ場所でも、片側は降って片側は晴れて...
夕立や 草葉をつかむ むら雀
与謝蕪村
名画大はしあたけの夕立(名所江戸百景) / 歌川広重
Season of Autumn
秋の七十二候
8月8日ごろ / 秋の節気
立秋 りっしゅう
「立秋(りっしゅう)」は、暦の上で秋が始まる日です。「秋が立つ(始まる)」という意味。とはいえ、実際にはまだ暑さの真っ盛りで、一年でもっとも暑い時期にあたります。けれど、この日を境に、朝夕にふと、すずしい風がまじりはじめ、空の雲や、虫の声に、少しずつ秋の気配が感じられるようになります。むかしの人は、目には見えない、かすかな季節...
涼風至
すずかぜいたる
「立秋(りっしゅう)」は、暦の上で秋が始まる日です。一年でいちばん暑さのきびしい時期ですが、それでも朝夕に、ふと、ひんやりとした涼しい風がまじりはじめます。むかしの人は、その小さな変化を見のがさず、「秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる」(古今和歌集)と詠みました。目にははっきり見えなくても、風の音に秋の気配を感じとる――そんなこまやかな季節感が、この候には宿っています。この日を境に、暑さ...
あかあかと 日は難面も 秋の風
松尾芭蕉
名画月百姿 石山寺の月 / 月岡芳年
寒蝉鳴
ひぐらしなく
「カナカナカナ……」と、もの悲しく澄んだ声で鳴くヒグラシ(蜩)の声が、夕方の林にひびくころです。「寒蝉(かんぜん)」とは、夏の終わりに鳴くセミのこと。ミンミンゼミやアブラゼミの、暑さを増すような声とはちがい、ヒグラシのひびきは、どこか涼しげで、夏の終わりのさびしさを感じさせます。じつはヒグラシは、夜明け前や夕暮れの、すずしくうす暗い時間に鳴くことが多いセミ。一日の暑さがやわらぐころ、いっせいに鳴きかわす声は、まるで季...
閑さや 岩にしみ入る 蝉の声
松尾芭蕉
名画東海道五十三次 宮 熱田神事 / 歌川広重
蒙霧升降
ふかききりまとう
朝や夕方に、深い霧(きり)が、もうもうと立ちこめるころです。「蒙(もう)」は、おおいつつむこと。昼と夜の気温の差が大きくなると、しめった空気が冷やされて、こまかな水のつぶ=霧になります。山あいや川べり、田んぼのうえが、白いベールにつつまれる景色は、まるで一幅の墨絵(すみえ)のよう。歌川広重も、東海道の「三島」を、朝霧にけむる幻想的な宿場として描き残しています。霧は、季節の変わり目の、空気がうるおっているしるし。夏のあ...
名画東海道五十三次 三島 朝霧 / 歌川広重
8月23日ごろ / 秋の節気
処暑 しょしょ
「処暑(しょしょ)」は、きびしかった暑さが、ようやくおさまるころ、という意味です。「処(しょ)」には、「とどまる・落ちつく」という意味があります。日中はまだ暑くても、朝夕にはずいぶんとすずしくなり、ほっとひと息つける時期。空も高くなり、わた雲やすじ雲など、秋らしい雲が見られるようになります。一方で、このころは台風(たいふう)が...
綿柎開
わたのはなしべひらく
「処暑(しょしょ)」は、きびしかった暑さが、ようやくおさまるころ、という意味です。「処」には、とどまる・落ちつくという意味があります。そんなころ、綿(わた)の畑では、実を包んでいた「柎(がく)」がぱっとひらいて、中から真っ白でふわふわの綿毛が、はじけるようにのぞきはじめます。この綿が、ていねいに摘みとられ、糸や布、ふとんの中わたへと姿を変え、人々をあたたかくつつんできました。木綿(もめん)は、絹(きぬ)よりも安く、じ...
名画木曽街道 長久保 / 歌川広重
天地始粛
てんちはじめてさむし
ようやく暑さがしずまって、天地(てんち=空と大地)の気がおさまり、すべてが落ちついて、涼しくなりはじめるころです。「粛(しゅく)」は、しずまる・引きしまるという意味。「粛々(しゅくしゅく)と進む」という言葉があるように、どこかおごそかな静けさをふくんだ字です。あんなにさわがしかった夏のいきおいが、すっと引いていき、空気がきりっと、すずやかに澄んでいきます。空は高くなり、雲は軽くなり、虫の音が日ごとにはっきりと聞こえる...
名画東海道五十三次 日坂 佐夜の中山 / 歌川広重
禾乃登
こくものすなわちみのる
稲(禾=のぎ、いね)が実り、たわわな金色の穂が、重そうにこうべを垂れるころです。「禾」は、稲などの穀物(こくもつ)をあらわす字。春に植えた小さな苗が、夏の日ざしと水をたっぷりすいこんで、ついに実りのときをむかえます。一面に広がる黄金色の田んぼが、風にゆれてさざ波のようにうねる風景は、実りの秋の、何ものにもかえがたい美しさ。「実るほど 頭(こうべ)を垂れる 稲穂かな」――稲が実るほどに穂を低くするように、人もまた、りっ...
名画東海道五十三次 岡崎 矢作橋 / 歌川広重
9月8日ごろ / 秋の節気
白露 はくろ
「白露(はくろ)」は、草花に、朝露(あさつゆ)がやどるころ、という意味です。夜のあいだに空気がぐっと冷えこむようになり、その冷たさで、大気中の水蒸気が、草の葉先で水のつぶ=露になります。朝日を受けて、草の葉できらきらと白く光る露のつぶは、まるで小さな宝石のよう。その美しい様子から「白露」と名づけられました。空気はいよいよ澄みわ...
草露白
くさのつゆしろし
「白露(はくろ)」は、草に朝露(あさつゆ)がやどるころ、という意味です。夜のあいだに空気がぐっと冷えこむと、大気中の水蒸気が、草の葉や花の先で水のつぶになります。これが露です。朝日を受けて、草の葉先できらきらと白く光る露のつぶは、まるで小さな宝石、あるいは銀のしずくのよう。むかしの人は、この露を、秋のおとずれを告げるものとして、こまやかに見つめてきました。「白露」という言葉には、露が白く輝いて見える、という美しい観察...
露の世は 露の世ながら さりながら
小林一茶
名画秋草図 / 宮崎友禅斎
鶺鴒鳴
せきれいなく
尾を上下にちょこちょことふりながら、ちょこまかと歩くセキレイ(鶺鴒)が、鳴きはじめるころです。「チチン、チチン」と、よくとおる声で鳴きます。長い尾で、地面や石をトントンとたたくように動かす、その愛らしいしぐさから、「石たたき」「庭たたき」などともよばれてきました。日本の神話では、このセキレイが、とても大切な役目をはたします。国づくりの神さま、イザナギとイザナミが、夫婦のむつみあい(仲むつまじくすること)の仕方がわから...
名画鶺鴒と蓮 / 小原古邨
玄鳥去
つばめさる
春にやってきて、軒先でにぎやかに子育てをしていたツバメ(玄鳥)が、あたたかい南の国へと帰っていくころです。「玄鳥(げんちょう)」はツバメのこと。子育てを終えたツバメたちは、川原のヨシ原などにいったん大きな群れで集まり、力をたくわえてから、いっせいに旅立ちます。その旅は、はるか東南アジアにまでおよぶこともあり、数千キロを飛びつづける、いのちがけの大冒険です。あんなに小さな体で海をこえていくのかと思うと、胸がいっぱいにな...
名画枝上の五羽の燕 / 歌川広重
9月23日ごろ / 秋の節気
秋分 しゅうぶん
「秋分(しゅうぶん)」は、春分とおなじく、昼と夜の長さが、ほぼ同じになる日です。太陽が真東からのぼって、真西にしずみます。この日を境に、これからは夜のほうが、だんだん長くなっていきます。「秋分の日」は国民の祝日で、「祖先(そせん)をうやまい、なくなった人々をしのぶ日」とされています。秋分の日をまん中にした前後7日間は「秋のお彼...
雷乃収声
かみなりすなわちこえをおさむ
「秋分(しゅうぶん)」は、春分とおなじく、昼と夜の長さがほぼ等しくなる日です。この日を境に、これからは夜のほうが少しずつ長くなっていきます。太陽が真東からのぼって真西にしずむため、春のお彼岸とおなじく、秋のお彼岸の中日(ちゅうにち)として、ご先祖さまを供養する大切な日でもあります。「暑さ寒さも彼岸まで」――きびしい残暑も、このころにはやわらいで、すごしやすくなります。さて、この候の名前は、春に「雷乃発声(雷が鳴りはじ...
名画木曽街道 須原 / 歌川広重
蟄虫坏戸
むしかくれてとをふさぐ
土の中や落ち葉のかげにすむ虫たちが、冬ごもりの支度に入り、すみかの出入り口を、土でふさぎはじめるころです。「坏(はい)」は、ふさぐこと。春の「啓蟄(けいちつ)」のときに、戸を開けて、いきおいよく外へ出てきた虫たち。あれから半年、夏のあいだ精いっぱい生き、子孫をのこした虫たちが、こんどは静かに土へと帰っていきます。出てくる「啓蟄」と、ふさぐ「蟄虫坏戸」。暦は、こうして春と秋に、対になる言葉をそっと置いて、季節がめぐるこ...
名画東海道五十三次 日坂 佐夜の中山 / 歌川広重
水始涸
みずはじめてかるる
田んぼの水を抜いて、いよいよ稲刈り(いねかり)の準備をするころです。「涸(か)れる」は、水がなくなること。春から夏にかけて、たっぷりと水をたたえ、稲を育ててきた田んぼ。その水を落として地面をかわかすことで、稲刈りの作業がしやすくなり、お米もよく乾いて、おいしく実ります。黄金色にこうべを垂れた稲穂が、ざくざくと刈り取られ、はざかけ(刈った稲を干すこと)にずらりとならぶ風景は、実りの秋のいちばんのみどころ。農家にとっては...
名画東海道五十三次 岡崎 矢作橋 / 歌川広重
10月8日ごろ / 秋の節気
寒露 かんろ
「寒露(かんろ)」は、草花におりる露が、いよいよ冷たく感じられるころ、という意味です。「寒(かん)」い「露(つゆ)」と書きます。秋がぐっと深まり、空気はますます澄みわたって、夜空の月や星が、はっとするほど美しく見えるようになります。日中はさわやかな秋晴れが続き、一年でもっとも、すごしやすく心地よい季節。北の国や山からは、紅葉の...
鴻雁来
こうがんきたる
「寒露(かんろ)」は、草木におりる露が、いよいよ冷たく感じられるころ、という意味です。秋が深まり、空気はますます澄んでいきます。そんなころ、春に北のシベリアへ帰っていったガン(雁)が、ふたたび海をこえて、冬を越すために日本へ渡ってきます。春の「鴻雁北(雁が北へ帰る)」と、対になる候です。ガンは、何百羽もの群れが、「さお」のように一直線になったり、「かぎ」のようにくの字に折れたりして、長い列をつくって、夕暮れの空を渡っ...
雁よ雁 いくつのとしから 旅をした
小林一茶
名画月に雁 / 歌川広重
菊花開
きくのはなひらく
菊(きく)の花が、見ごろをむかえてひらくころです。菊は、桜とならんで日本を代表する花で、その気高く整った姿から、古くから特別に愛されてきました。皇室の紋章(もんしょう)に使われ、パスポートの表紙や五十円玉にもえがかれている、日本を象徴する花でもあります。中国から伝わった菊は、邪気をはらい、長生きをもたらす「不老長寿(ふろうちょうじゅ)」のめでたい花とされてきました。九月九日の「重陽(ちょうよう)の節句」は別名「菊の節...
菊の香や 奈良には古き 仏たち
松尾芭蕉
名画菊図 / 作者不詳
蟋蟀在戸
きりぎりすとにあり
コオロギ(蟋蟀)が、家の戸口のあたりまでやってきて鳴き、深まる秋の夜長を告げるころです。むかしは「きりぎりす」と読みましたが、これは今のコオロギのことをさします。「リーリー」「コロコロ」と、すずやかに澄んだその音色は、しずかな夜にしみ入るよう。日本人は古くから、この虫の声を「鳴く」ではなく、まるで楽器をかなでるように味わい、もの悲しくも美しい秋の調べとして、深く愛してきました。スズムシ、マツムシ、コオロギ……それぞれ...
名画秋草図 / 宮崎友禅斎
10月24日ごろ / 秋の節気
霜降 そうこう
「霜降(そうこう)」は、北の地方や山あいから、霜(しも)が降りはじめるころ、という意味です。よく晴れて冷えこんだ朝、草木や畑が、うっすらと白い霜におおわれます。秋もいよいよ終わりに近づき、朝晩の冷えこみが、はっきりと強くなってきます。山々の紅葉は、平地へとだんだん降りてきて、燃えるような赤や黄に、野山を彩ります。「紅葉狩り(も...
霜始降
しもはじめてふる
「霜降(そうこう)」は、北の地方や山あいから、霜(しも)が降りはじめるころ、という意味です。よく晴れて冷えこんだ朝、草の葉や屋根、畑の土が、うっすらと白くおおわれます。霜は、雪のように空から降ってくるものではなく、空気中の水蒸気が、冷たいものの表面でこおって、こまかな氷の結晶になったもの。だから「降りる」と書くのですね。その年に初めて降りる霜を「初霜(はつしも)」とよびます。農家にとって霜は、作物をいためる、こわい存...
名画木曽街道 須原 / 歌川広重
霎時施
こさめときどきふる
小雨(こさめ)が、降ったりやんだりをくり返すころです。「霎(しょう)」は、さっと降ってすぐにあがる、通り雨のこと。ひとしきり降ったかと思えば、さっと晴れ間がのぞき、また降りだす――。そんな気まぐれな雨を「時雨(しぐれ)」とよびます。とくに晩秋から初冬にかけて、山あいや盆地で多く見られる、この季節ならではの雨です。「時雨」は、和歌や俳句で愛された秋冬の風物で、松尾芭蕉が、自分の俳号(俳句のペンネーム)にちなんで好んだ言...
初しぐれ 猿も小蓑を ほしげなり
松尾芭蕉
名画近江八景 唐崎夜雨 / 歌川広重
楓蔦黄
もみじつたきばむ
楓(もみじ)や蔦(つた)の葉が、赤や黄色に、あざやかに色づくころです。山々が、燃えるように染まっていく紅葉(こうよう)は、桜の花とならぶ、秋のいちばんのごちそう。春の「お花見」に対して、秋に紅葉を見て歩くことを「紅葉狩り(もみじがり)」とよびます。なぜ葉は色づくのでしょう。木は、冬にそなえて葉を落とす準備に入ると、葉のみどりのもと(葉緑素)がこわれていきます。すると、かくれていた黄色の色素があらわれ、さらに葉に残った...
山くれて 紅葉の朱を うばひけり
与謝蕪村
名画名所江戸百景 真間の紅葉 手古那の社 / 歌川広重
Season of Winter
冬の七十二候
11月7日ごろ / 冬の節気
立冬 りっとう
「立冬(りっとう)」は、暦の上で冬が始まる日です。「冬が立つ(始まる)」という意味。木々の葉はすっかり落ち、北からは木枯らし(こがらし)がふいて、日ざしも弱まり、日に日に冬めいてきます。日の暮れるのもぐっと早くなり、「秋の日はつるべ落とし」を実感する時期です。とはいえ、まだ本格的な寒さではなく、ぽかぽかと暖かい「小春日和(こは...
山茶始開
つばきはじめてひらく
「立冬(りっとう)」は、暦の上で冬が始まる日です。木々の葉は落ち、北風が冷たさを増し、いよいよ冬の到来です。そんなさびしくなりはじめた庭に、「山茶花(さざんか)」の花が、ぽつぽつとさきはじめます。「山茶(さざんか)」は、お茶の仲間の、ツバキ科の花。じつは、この候の名前「山茶」はサザンカをさし、よく似たツバキとは、咲く時期と散り方がちがいます。サザンカは初冬にいち早く咲き、花びらが一枚ずつはらはらと散るのに対し、ツバキ...
山茶花を 雀のこぼす 日和かな
正岡子規
名画椿に文鳥 / 小原古邨
地始凍
ちはじめてこおる
大地が冷えこんで、いよいよ凍りはじめるころです。夜のあいだに地面の中の水分がこおって、細い氷の柱がにょきにょきと土をもち上げる「霜柱(しもばしら)」ができます。朝、それをサクッ、サクッとふみながら歩くのは、冬の小さなたのしみ。土の表面がもち上がって、ふっくらと白くなっている景色は、寒さがきびしくなってきたしるしです。また、池や水たまりにも、うすい氷がはりはじめます。指でそっとつついて、ぴきっと割れる音を聞くのも、この...
名画名所江戸百景 箕輪金杉三河しま / 歌川広重
金盞香
きんせんかさく
「金盞(きんせん)」とは、水仙(すいせん)の花のこと。よい香りの水仙が、さきはじめるころです。「盞(さん)」は、小さなさかずきのこと。水仙の花の真ん中にある黄色い部分が、金色のさかずきのように見えることから、「金の盞(さかずき)」=金盞と名づけられました。白い花びらを銀の台に見立て、「金盞銀台(きんせんぎんだい)」ともよばれます。なんとも雅(みやび)な呼び名ですね。水仙は、冬の寒さの中でも、すっと背すじを伸ばして咲き...
初雪や 水仙の葉の たわむまで
松尾芭蕉
名画名所江戸百景 日本橋雪晴 / 歌川広重
11月22日ごろ / 冬の節気
小雪 しょうせつ
「小雪(しょうせつ)」は、わずかに雪が、ちらつきはじめるころ、という意味です。「小(しょう)」さく「雪(ゆき)」が降る、と書きます。北国や山では、初雪のたよりが届きますが、平地では、まだ積もるほどではありません。寒さもまだ、それほどきびしくはなく、おだやかな日も多いころです。日ざしはいよいよ弱まり、空気もかわいて、空からは虹が...
虹蔵不見
にじかくれてみえず
「小雪(しょうせつ)」は、寒さがまだ深くはないものの、ちらちらと、わずかに雪が降りはじめるころ、という意味です。そんなころ、空からは虹が、すっかり姿を消してしまいます。夏や秋には、雨上がりによく見られた虹。けれど冬は、日ざしが弱くなり、空気もかわいて、虹をつくる水のつぶが少なくなるため、見かけることがなくなるのです。春の「虹始見(にじはじめてあらわる)」と、ちょうど対(つい)になった候で、暦は、虹のあらわれる季節と...
名画名所江戸百景 びくにはし雪中 / 歌川広重
朔風払葉
きたかぜこのはをはらう
「朔風(さくふう)」とは、北風のこと。「朔(さく)」は、方角の北をあらわす、古い言葉です。その冷たい北風が、木々に残った葉を、いっせいにはらい落とすころです。ぴゅうっと音を立ててふく木枯らし(こがらし)に、はらはら、くるくると舞い散る落ち葉。地面いっぱいに散りしいた葉を、かさこそとふみながら歩くのも、この季節らしい風情です。葉をすっかり落とした木々は、枝だけのすがたになって、じっと寒い冬にたえる準備に入ります。一見...
木枯らしや 頬腫れ痛む 人の顔
松尾芭蕉
名画名所江戸百景 愛宕下藪小路 / 歌川広重
橘始黄
たちばなはじめてきばむ
日本に昔から自生する橘(たちばな)の実が、黄色く色づくころです。橘は、小さなミカンの仲間で、日本にもともとあった、ただひとつの野生のかんきつ類とされます。橘がとくに大切にされてきたのは、寒い冬でも葉を落とさず、青々としたみどりをたもちつづけるから。そのことから、橘は「永遠(えいえん)」や「不老長寿(ふろうちょうじゅ)」の象徴とされ、たいへん縁起のよい木とされてきました。京都御所の紫宸殿(ししんでん)の前には、「右近の...
名画椿に文鳥 / 小原古邨
12月7日ごろ / 冬の節気
大雪 たいせつ
「大雪(たいせつ)」は、雪が、いよいよ本格的に降りはじめるころ、という意味です。「大(たい)」きく「雪(ゆき)」が降る、と書きます。山々はすっかり雪におおわれ、北国では、平地にも雪が積もりはじめます。空はどんよりと厚い雲にふさがれ、冷たい北風がふきつけて、いよいよ冬本番。動物たちは冬ごもりに入り、人も、暖をとって、じっと寒さを...
閉塞成冬
そらさむくふゆとなる
「大雪(たいせつ)」は、いよいよ雪が本格的に降りはじめるころ、という意味です。「閉塞(へいそく)」は、ふさがって、とじること。空が、どんよりと厚い雲にすっかりふさがれて、太陽も顔を出さない、本格的な冬になります。山あいでは雪が深く降り積もり、町にも、身を切るような冷たい風がふきこみます。生きものたちも、人も、暖をとって、じっと寒さをしのぐ季節です。歌川広重は、東海道の宿場「蒲原(かんばら)」を、しんしんと雪の降り積も...
いざ行かむ 雪見にころぶ 所まで
松尾芭蕉
名画東海道五十三次 蒲原 夜之雪 / 歌川広重
熊蟄穴
くまあなにこもる
クマ(熊)が、冬眠(とうみん)のために、穴にこもるころです。クマは、秋のうちに、ドングリや木の実、サケなどをたくさん食べて、体にたっぷりと脂肪(しぼう)をたくわえます。そして、木のうろや、岩のすきま、土をほった穴などをねぐらにして、春までの長い眠りにつくのです。冬眠のあいだ、クマはほとんど飲まず食わずで、息もゆっくりになり、体の力を最小限におさえて、きびしい冬をのりこえます。おどろくことに、メスのクマは、この冬眠のあ...
名画名所江戸百景 箕輪金杉三河しま / 歌川広重
鱖魚群
さけのうおむらがる
サケ(鮭)が、群れをなして、自分の生まれた川を、いっせいにのぼってくるころです。広い海で、数年かけて大きく育ったサケは、たまごを産むときがくると、生まれ故郷の川へと帰ってきます。なぜ、たくさんの川の中から、自分の生まれた川がわかるのか――。それは、川のにおいを、子どものころに記憶しているからだ、と考えられています。なんとふしぎな能力でしょう。流れにさからい、ときには滝のような場所もとびこえて、力のかぎりさかのぼってい...
名画鮭 / 高橋由一
12月22日ごろ / 冬の節気
冬至 とうじ
「冬至(とうじ)」は、一年でいちばん昼が短く、夜が長い日です。太陽の力がもっとも弱まる日ですが、裏を返せば、この日を境に、昼は少しずつ長くなっていきます。だから昔の人は、冬至を「一陽来復(いちようらいふく)」――おとろえた太陽がよみがえり、運がふたたび上向く、めでたい日として大切にしてきました。冬至には、ゆず湯(ゆずをうかべた...
乃東生
なつかれくさしょうず
「冬至(とうじ)」は、一年で昼がいちばん短く、夜がいちばん長い日です。太陽の力がもっとも弱まる日ですが、裏を返せば、この日を境に、昼は少しずつ長くなっていきます。だから昔の人は、冬至を「一陽来復(いちようらいふく)」――おとろえていた太陽の力が、ふたたびよみがえる、めでたい日として、大切にしてきました。さて、この候の「乃東(だいとう)」とは、「靫草(うつぼぐさ)」のこと。夏至のころに枯れたこの草が、寒さのきびしいこの...
名画名所江戸百景 王子装束ゑの木 大晦日の狐火 / 歌川広重
麋角解
さわしかのつのおつる
大きなシカ(麋=なれしか、おおじか)の、りっぱな角(つの)が、ぽろりと抜け落ちるころです。オスのシカの角は、毎年、生えかわります。春に新しい角が生えはじめ、秋の恋の季節にはみごとに育って、メスをめぐって角を突き合わせて争い、そして冬、役目を終えた古い角が、ぽろりと落ちるのです。古いものを、いさぎよく手ばなして、また新しく生まれ変わる――。一年のしめくくりにあたるこの時期に、なんともふさわしい、自然のいとなみですね。奈...
名画名所江戸百景 愛宕下藪小路 / 歌川広重
雪下出麦
ゆきわたりてむぎいずる
しんしんと降り積もった雪の下で、麦が、青い芽を、じっと伸ばしているころです。あたり一面が雪と氷におおわれ、いのちの気配が消えたように見える真冬。けれど、その冷たい雪の下では、秋にまいた麦の種が、ちゃんと芽を出して、春を待っているのです。じつは雪は、ふとんのように、麦をきびしい寒さや、かわいた風から守ってくれる、あたたかい毛布のようなもの。雪の下は、外気よりもずっと暖かく、温度も安定しているのです。雪深い地方で育つ「雪...
旅に病んで 夢は枯野を かけ廻る
松尾芭蕉
名画東海道五十三次 蒲原 夜之雪 / 歌川広重
1月6日ごろ / 冬の節気
小寒 しょうかん
「小寒(しょうかん)」は、寒さが、これから本格的にきびしくなっていくころ、という意味です。「寒の入り(かんのいり)」ともいい、この日から「大寒」をへて立春までの約一か月が「寒(かん)」――一年でもっとも寒い時期となります。「寒中見舞い(かんちゅうみまい)」の手紙を出すのも、この時期です。お正月の松の内(まつのうち)が明けて、一...
芹乃栄
せりすなわちさかう
「小寒(しょうかん)」は「寒の入り(かんのいり)」ともいい、ここから、一年でもっとも寒い時期が始まります。この日から「大寒」を経て立春までの約一か月を「寒(かん)」とよび、寒中見舞いを出すのも、この時期です。そんな冷たい水辺で、春の七草のひとつ「芹(せり)」が、青々とよく育つころです。せりは、清らかな流れのほとりに、すずやかに群れて生える、香りのよい野草。一月七日の朝には、せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ...
名画名所江戸百景 びくにはし雪中 / 歌川広重
水泉動
しみずあたたかをふくむ
地面の下で、こおっていた泉(いずみ)の水が、かすかに動きはじめるころです。地上は、一年でもっとも寒さのきびしい時期。あたりは凍りつき、すべてが眠っているように見えます。けれど、目に見えない土の中、深いところでは、泉の水が、ほんの少しずつ、あたたかさをふくみはじめているのです。「水泉(すいせん)動く」――この、こまやかな観察には、おどろかされます。もっとも寒い時期に、もう次の春のきざしを、地中の水の動きに見いだしている...
名画名所江戸百景 日本橋雪晴 / 歌川広重
雉始雊
きじはじめてなく
オスのキジ(雉)が、メスを求めて「ケーン、ケーン」と、高く鋭い声で鳴きはじめるころです。キジは、日本の国鳥(こくちょう)。オスは、緑や赤のあざやかで美しい羽をもち、桃太郎のお供として鬼退治に行く、あの鳥としても、おなじみですね。「ケーンケーン」という鳴き声は、恋の季節のはじまりの合図。寒さがもっともきびしいこの時期に、もう次の世代へ向けて、春の気配が動きだしているのです。また、キジは地震を前に鳴く、ともいわれ、大地の...
名画雉子と蛇 / 葛飾北斎
1月20日ごろ / 冬の節気
大寒 だいかん
「大寒(だいかん)」は、その名のとおり、一年でもっとも寒さがきびしくなるころです。「寒(かん)」のまん中で、池や川が凍りつき、雪が深く降り積もる、寒さの底の時期。けれど、この大寒をのりこえれば、つぎはもう、春の始まりの「立春」です。きびしい寒さは、じつは、おいしいものを生み出す季節でもあります。この時期の、もっとも寒い水で仕込...
款冬華
ふきのはなさく
「大寒(だいかん)」は、その名のとおり、一年でもっとも寒さがきびしくなるころです。武道の寒稽古(かんげいこ)や、寒さを利用した寒仕込み(かんじこみ)――味噌やお酒、凍み豆腐づくりなどが行われるのも、この時期です。そんなきびしい寒さの中、雪の下や、枯れ草のあいだから、フキノトウ(款冬=ふきのとう)が、ちょこんと顔を出しはじめます。「款冬」は、フキのこと。フキノトウは、フキの花のつぼみで、ほろ苦い、独特の風味があります...
これがまあ つひの栖か 雪五尺
小林一茶
名画東都 数寄屋橋 / 歌川広重
水沢腹堅
さわみずこおりつめる
沢(さわ)を流れる水さえも、芯(しん)まで厚く、かたく凍りつくころです。「腹堅(ふくけん)」とは、中心まで、ぶ厚くかたく凍ること。一年でもっとも寒さが底まで深まる、まさに寒さのピークです。流れる水が凍るほどですから、池や湖は一面に氷がはり、軒先(のきさき)には、つらら(氷柱)が、長く垂れさがります。北国では、川や滝までもが凍りつき、息をのむほど美しい、氷の世界が広がります。あまりに寒いと、空気中の水分が凍ってきらきら...
易水に ねぶか流るる 寒さかな
与謝蕪村
名画名所江戸百景 王子装束ゑの木 大晦日の狐火 / 歌川広重
鶏始乳
にわとりはじめてとやにつく
ニワトリ(鶏)が、春の気配を感じて、たまごを産みはじめるころです。「とやにつく」とは、鳥が巣(とや)に入って、産卵(さんらん)の準備をすること。むかしのニワトリは、いまのように一年じゅう卵を産むのではなく、日が長くなり、あたたかくなる春に向けて、卵を産みはじめました。寒さがもっともきびしいこの時期に、ニワトリは、近づく春の光をいち早く感じとっているのですね。さて、この「鶏始乳」は、七十二候の、いちばん最後の候です。立...
目出度さも ちう位なり おらが春
小林一茶
名画雄鶏図 / 伊藤若冲
FAQ
よくある質問
七十二候とは何ですか?
七十二候は、二十四節気をさらに三つに分けた、およそ五日ごとの季節の名前です。動植物や天候の変化を手がかりに、季節の細かな移ろいを表します。
二十四節気と七十二候の違いは?
二十四節気は一年を24に分ける暦で、七十二候はその各節気を初候・次候・末候の三つに分けます。つまり七十二候のほうが、より短い周期で季節を見ます。
七十二候はいつ変わりますか?
目安として約五日ごとに変わります。実際の日付は年によって少し動くため、暦アプリや暦計算で確認すると正確です。
七十二候は日本独自のものですか?
もとは中国由来ですが、日本の気候や暮らしに合わせて改訂された「本朝七十二候」が広く親しまれています。
今日の七十二候を知るには?
暦の輪アプリでは、今日の七十二候、二十四節気、六曜、旧暦、月齢、旬、名句、浮世絵をまとめて確認できます。